社会情報学専攻「 1998年4月~
1. 連携ユニット運営の方針 本連携ユニットは、情報学研究科開設以来、民間企業である野村総合研究所との協力において運営されており、社会経済全般における情報学の適用と開発において実学面からの経験と人的組織的ネットワークを生かし、社会との接点におけるテーマの選定と論理的な分析による価値を重視した成果の達成と人材育成を目標として運営している。 学生には特に企業組織経営、情報通信政策、市場や社会の課題について、自らテーマを開拓することを原則として深く議論を進め、各分野のトップの研究者との研究交流の場を提供しつつ、科学的な方法論によって課題解決法の開発や仮説検証を行う経験をしてもらうことを重視する。一過性の研究の経験にとどまらず、その先の進路において、研究や調査の考え方や手法、作法を身につけられるよう指導しており、研究課題も、その趣旨に沿った特徴のあるテーマを、やや時間をかけて納得のいくまで練り上げてもらっている。 学術上の研究成果と同時に、研究者本人の経験を同程度に重要と考えて運営をしているが、そうした方針はユニットにおける入口(入試)と出口(卒業後進路)の両面で、広く受け入れられるようになっていると考える。
2.
(教育体制): ・教授:篠原 健(1998 年4 月~2005 年3 月)、横澤 誠(2005 年4 月~) ・准教授(助教授):横澤 誠(1998 年4 月~2005 年3 月)、木下 貴史(2005 年4 月~)
(成果概要) 大学院への入口(志望学生に対して)において、当ユニットは発足以来ほぼ毎年2名(定員1名)の修士課程入学者を受け入れており、当ユニット志望ながらも定員超過のため他分野に配属されたものが多く、社会情報学専攻の魅力を志望学生に対して発信する上で貢献していると考える。 累積在籍学生数:修士課程24名(このうち修士取得済み17名、在学中4名、本学学部卒業者10名、留学生1名-中国)である。また現在在籍中の1名は日本人ではあるが国際コース履修を選択し、研究指導に関する部分を英語で行っている。 大学院からの出口(卒業後の進路)に関しては、下記人材育成成果リストに見るように、学際的で多彩な人材の輩出を継続しており、その進路は単純な文系理系の範囲を超えて、研究者(本学教員含む)、創業者、法曹界、IT、金融、外資、人材企画、商社に及ぶ。これが学外からの志望者からの視点において、よい影響を与え多彩な人材の循環を形成しつつあると思う。 3.
毎週1度、教員が京大で3-4時間の指導実施しているほか、非公開ブログ形式で自分の研究の進捗を研究ノートとして蓄積させ、随時教員がチェックを行い助言や指示を与えている。また遠隔地からの指導を補う意味で、ビデオ会議や電話会議を多用し、モティベーションを高める努力をしている。また、社会との接点を第一ととらえ、以下のような活動を通じて人的ネットワークを早期に形成して、実業人や研究者としてのリーダーシップを発揮できることを意図している。 ・ 指導教員の本務先である野村総合研究所の業務をインターンに準じて補佐(ケーススタディなど) ・ OECD(経済協力開発機構、パリ)の経済産業諮問委員会(BIAC)へのインターン派遣(毎年3ヶ月程度)と、現地での人脈形成(OECD等国際機関、現地シンクタンク、現地大学など) ・ 他大学修士課程学生(社会人を含む)や国立研究所研究員有志との共同研究会を月に1回東京で行い、特に修士2回生の研究進捗状況について、研究者やICT業界の実業人との交流を通じてテーマ開拓を自主的に行う ・ 情報サービスに関連する社団法人の研究分科会において参加企業の技術保有実態を調査する活動を補佐(ほぼ隔年で実施) ・ 情報サービスに関係する白書の執筆(国際情報政策の項目、最近3年間継続) ・ 国際人材育成に関するNPO法人の活動に参加、元外務大臣や国際機関トップ経験者の講演会企画や補佐(月1回程度) ・ 教員の関連する情報通信政策活動(OECD, APEC, ITU、総務省、経済産業省、経団連など)での重要テーマについて付随的調査担当 また、学内の場を中心とした活動においても、以下のような指導を行っている。 ・ 教員が運営委員を務める学会研究会(情報処理学会知的財産・社会基盤研究会)での発表(各人毎年1回を原則) ・ 海外インタビュー調査(これまでに中国、フランスなどで実施) ・ 卒業後にも人脈として有用となる多彩なアドバイザ選定(これまでに中央省庁の政策担当者、知識管理第一人者、個人情報保護第一人者、OECDの研究者、連携先の野村総合研究所専門家など) ・ 情報サービス企業との共同開発(商用仮想空間内実験やアンケートシステムなど) ・ 後期講義科目「ビジネス情報論」の受講と補佐 5. 学術面や社会貢献での成果 学際的な分野に取り組む当ユニットにおいては、技術的な新しさ飲みを追求するのではなく社会経済的なテーマにおいて、時流に即して変化する情報通信技術の応用面、市場面、人間組織の面、政策的課題の面における研究成果を目指している。複雑なエコシステムである市場や組織の観察と、理解のためのモデル作り、シミュレーションによるメカニズムの把握を成果として、全校の修士論文以外に以下のような成果を上げている。また、これ以外にも教員がOECDやAPECなどの国際組織の会議およびそれら主催のシンポジウムやワークショップ、国内の中央省庁や経済団体、業界団体などで委員会委員、各種公の場での口頭発表、会議の主催などを行い、活発に社会貢献をしている。
(英文論文) l Yutaka Yamauchi, Makoto Yokozawa, Takeshi Shinohara, Toru Ishida: Collaboration with Lean Media: How Open-Source Software Succeeds. Sept. 2002, International Conference on Computer Supported Cooperative Work (CSCW-00) pp. 329-338, Philadelphia PA l Yoichiro Itakura, Makoto Yokozawa, Takeshi Shinohara: Model Analysis of Digital Copyright Piracy on P2P Network ,2004, The 2004 Symposium on Applications and the Internet Workshops(SAINT2004 Workshop), pp.84-89,Tokyo Japan l Saeko Nomura, Toru Ishida, Makoto Yokozawa: International Comparative Study of Identity as Presented on the Internet, 2001,4th International Conference on Computational Intelligence and Multimedia Applications (ICCIMA-01),pp.77-81, Yokosuka Japan l Hiromi Uwada, Akiyo Nadamoto, Tadahiko Kumamoto, Toru Hamabe, Makoto Yokozawa, Katsumi Tanaka: Automated Content Transformation with Adjustment for Visual Presentation Related to Terminal Types. APWeb 2006: 1214-1217 l Akiyo Nadamoto, Tadahiko Kumamoto, Hiromi Uwada, Toru Hamabe, Makoto Yokozawa, Katsumi Tanaka: u-PaV: Automatic Transformation of Web Content into TV-like Video Content for Ubiquitous Environment. MDM 2006: 61
(和文論文、出版物、研究会等口頭発表) l 1999年、オープンソースソフトウェア開発におけるイノベーションの分析、山内 裕、横澤 誠、篠原 健(情報処理学会研究報告No.1999-GN-034) l 2000年、単行本『ユビキタス・ネットワーク』執筆リーダー:横澤 誠)、野村総合研究所、 l 2004年、「ユビキタスコミュニケーションの今後の展望」、横澤 誠、『電子通信情報学会誌』 l 2011年、「クラウド・コンピューティングとそのガバナンスの社会経済面」、横澤 誠、情報ネットワーク法学会・情報ネットワーク・ローレビュー第10巻 l 情報処理学会知的財産・電子化基盤研究会等の修士課程在学生、教員の口頭発表12件 Ø 2003年1月 Peer-to-Peer アーキテクチャのメッセージ共有への応用 ○鳥居大祐,田中裕一郎,横澤 誠,篠原 健(京大)(この年に限り情報処理学会グループウェア研究会) Ø 2005年3月、Web文書タイプ自動分類手法の比較評価と適用の研究(井筒清史、横澤 誠、篠原 健) Ø 2005年11月、多様な視聴スタイルを可能にするコンテンツ変換サービス、宇和田 弘美(野村総合研究所),濱辺 徹(野村総合研究所),横澤 誠(野村総合研究所・京都大学),灘本 明代(情報通信研究機構),熊本 忠彦(情報通信研究機構),田中 克己(情報通信研究機構・京都大学) Ø 2007年12月、情報通信技術の成熟度と資産的価値の推移モデル ○林 良太郎(京都大),横澤 誠(京都大/野村総研) Ø 2007年12月、クロス=コミュニティ仮想通貨による互酬行動の分析 ○西畑俊樹(京都大),横澤 誠(京都大/野村総研) Ø 2008年1月、コミュニティマネーの現状、中村 元気(京都大学),横澤 誠,木下 貴史(京都大学)(野村総合研究所) Ø 2008年1月、コミュニティ仮想通貨による互酬行動の分析 ○西畑 俊樹(京都大学),横澤 誠,木下 貴史(京都大学)(野村総合研究所) Ø 2008年1月、情報通信技術の成熟度と資産的価値の推移モデル ○林 良太郎(京都大学),横澤 誠,木下 貴史(京都大学)(野村総合研究所) Ø 2009年3月、オフショア・ソフトウェア開発における企業連携に関する研究、 横澤 誠,木下貴史(野村総合研究所),林良太郎(モルガン・スタンレー),〇熊 力(京大) Ø 2009年3月、エコイノベーションにおける消費者行動に関する研究 ○灘本裕紀(京大),横澤 誠,木下貴史(京大/野村総研) Ø 2010年2月、オフショア・ソフトウェア開発における企業連携に関する研究 熊力(京大),木下貴史,横澤誠(京大/野村総研) Ø 2010年2月、エコイノベーション集団評価システムの開発と検討-集合知による環境対策とイノベーションの両立- 灘本裕紀(京大),横澤誠,木下貴史(京大/野村総研) Ø ほか同研究会においてポスターセッション4件
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